東京ハイヤー・タクシー交通共済協同組合

年頭のご挨拶 ~創立50周年を迎えて~

東京ハイヤー・タクシー交通共済協同組合
理事長 川村 泰利

 謹んで新春のお慶びを申し上げます。
旧年中は、組合員並びに関係者の皆様には、当組合の事業運営に対しましてご支援、ご協力を賜り心から御礼を申し上げます。
 昨年を振り返ってみますと、新型コロナウイルスの感染拡大により、1月早々に首都圏に第2回目(第1回目は一昨年4月)の緊急事態宣言が発令され、まん延防止等重点措置期間を挟み断続的に4回目の緊急事態が9月30日で解除されるまで、社会生活や経済活動への厳しい制限が続きました。国内で新型コロナウイルス感染症の拡大が一段落したとはいえ、欧州や米国では再拡大しており、南アフリカでは新たな変異株が検出されるなど、終息は未だ見通せない状況にあります。
 一方、昨年の新型コロナウイルス感染拡大の中、7月23日から9月5日の期間、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会が開催され、日本勢が史上最多のメダルを獲得する大活躍をみせました。また、10月にはノーベル物理学賞にプリンストン大学客員研究員で国立研究開発法人海洋研究開発機構フェローの眞鍋淑郎氏が受賞するなど、明るい話題もありました。
 政界においては、昨年10月に突然、菅内閣が総辞職し、一昨年9月に発足した菅政権は、1年余りで幕を閉じました。替わって岸田首相が就任し、「新しい資本主義」、「成長と分配の好循環」、「令和の所得倍増計画」などの経済政策を掲げ衆議院を解散し、単独過半数を超える議席を獲得して、勝利しました。当面は「第6波」到来も予想される新型コロナウイルス感染への備えやコロナ禍で傷んだ経済の回復などの課題対応が期待されるところです。
 ハイヤー・タクシー業界におきましては、新型コロナウイルス感染防止対策として、日常生活と感染拡大防止対策を両立していくための「新しい生活様式」が実践される中、テレワークの普及や夜の街での飲食等の減少、さらにはインバウンドの減少などにより、大幅な需要の落ち込みが継続しております。緊急事態宣言が解除された昨年の10月以降は需要や営業収入の回復が見られますが、コロナ前の水準には及ばず、第6波も心配されるところです。また、乗務員の離職が進んでいること、健康起因による重大事故の発生、燃料の高騰なども大きな懸念材料となっております。加えて、自宅2km圏・定額乗り放題オンデマンド交通システム「mobi(モビ)」の実証実験やUDタクシー乗降介助の料金設定など国土交通省の対応を注視していく必要があります。
 一方、昨年のコロナ禍にあって、事業環境が厳しい中、感染防止対策を徹底しつつ、国民の日常生活や社会活動を支える足として、寄与して参りました。また、東京オリンピック・パラリンピックの選手・大会関係者の輸送への協力やコロナウイルス陽性患者の移送や海外からの帰国者の送迎に貢献するなど、エッセンシャルワーカーとして、ハイヤー・タクシーの存在が大きくクローズアップされました。
 政府では、昨年11月19日に「コロナ克服・新時代開拓のための経済対策」を閣議決定し、新たな経済対策の一つとして、「地域のくらしを創るサステナブルな地域公共交通の実現」を掲げており、観光立国政策や「GoToトラベル」キャンペーンの再開、燃料高騰対策など、2021補正予算で実施していくこととしています。これらの政策が、需要の喚起や事業の安定化に繋がることに大きな期待を寄せるところです。
 また、昨年11月のG20リヤド・サミットにおいて、日本は2050年に温室効果ガスの排出を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」の実現を目指す決意を改めて表明し、国際公約としました。運輸部門の当面の目標は、CO2(二酸化炭素)排出量について「2030年度までに13年度比35%の削減」とされているところであり、今後、電気自動車や水素などの新しい燃料の採用による持続可能なタクシー専用車両の普及に取り組んでいく必要があります。
 さて、当組合は本年4月1日に創立50周年を迎えることとなりました。モータリゼーションが進展し、交通事故が急増して社会問題となった昭和40年代、ハイヤー・タクシー事業にあっても交通事故の防止や被害者の保護・救済が強く求められる中、当時の東旅協に事故共済部が設置され、その後関係当局の指導もあり、中小企業等協同組合法に基づく協同組合を昭和47年4月1日に設立し、共済事業を引き継いで現在に至ったものです。爾来、当組合は、交通事故の撲滅と被害者救済を最重点課題として取り組み、今日の交通共済の社会的地歩を築いてまいりました。
 厳しい経営環境の中、昨年は、経常利益、当期純利益とも5期ぶりの黒字計上となりました。また、事故受付件数は昨年度より若干の増加となりましたが、コロナ前の令和元年に比べれば3割ほど減少しており、とりわけ2年以上「死亡事故ゼロ」を継続しております。これも組合員各社のご努力、ご協力によるものと感謝申し上げます。
 引き続き、各季の交通安全運動・交通安全キャンペーンの展開や事故防止責任者講習会をはじめとする各種講習会・研修会、助成事業「ペダル踏み間違い時加速抑制装置購入費補助」などを通じ、交通事故の撲滅に向け取り組んでまいります。
 当組合といたしましては、次の50年に向け、本年も組合員の経営の安定と共済組合としての特性を生かしながら、「相互扶助の精神」を基本理念に事業運営に心掛ける所存でございますので、今後ともより一層のご支援、ご協力を賜りますようお願い申し上げます。
 年頭に当たり、組合員並びに関係者の皆様方のご健勝と事業の益々のご隆盛をお祈り申し上げまして、新年のご挨拶とさせていただきます。

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